2014年8月4日月曜日

ワールドハピネス2014 出演アーティストの動画を淡々と貼るよ

今年もワールドハピネスに行きます。

http://www.world-happiness.com/

行くのはこれで4回目ですがもはやYMOも出ないこのフェスに行く意味があるのか?2chではオッサンの行くフェスと揶揄されてるけど?夢の島って異様に暑くない?と諸問題がありますが、会場が駅近、2ステージが移動なしで楽しめる、日陰が多い、託児所や子供の遊べるブースがある、いざとなったら敷地内の東京スポーツ文化館逃げ込める、と子連れにとってはかなりありがたいフェスなのです。

先日ようやくタイムテーブルが発表されたので出演アーティストの最新動画を貼って予習・復習したいと思います。というか半分以上は初見なので完全に自分の勉強用なんですがこのページを見てる中でご参加される方はぜひ参考にしてください。ちなみに出演順です。


PUFFY「秘密のギミーキャット ~うふふ 本当よ~」
 
これROLLYが作詞・作曲なのね。いいわあ。



ねごと「真夜中のアンセム」
 
「カロン」ぐらいで認識が止まってたけど今こんなニューウェーブみたいになってるのか!
これはこれでカッコいい



真心ブラザーズ「I' M SO GREAT!」
 
いつの間にか自主レーベルを設立したりしてたんですね。
まあ夏フェスなのでSUMMER NUDEかDear,Summer Friendはやってくれると思います。



赤い公園「サイダー」
 
おおーいなんだこれいいな!亀田誠治プロデュース!ベースブリブリ!



高橋幸宏 with In Phase「"PHASE" Official Trailer」
 
AORというか洒脱な雰囲気のソフトロック。
個人的にはジェームズ・イハが見られるというだけで楽しみ。



ヒトリエ「アンチテーゼ・ジャンクガール」
 
この人達、全くノーマークだったんですがドラムがバカテクですね。



きゃりーぱみゅぱみゅ「きらきらキラー」
 
前回もワーハピで見ましたがきゃりーさんはライヴで見るに限ります。本当にちっちゃいんだ。
ここ最近のきゃりーさんの楽曲はアニソンというかミクさんというかそこら辺の楽曲に近づいているような気がする。



くるり「Remember me」
 
かれこれ5年以上ライヴに行ってなかったので本当に楽しみ。



cero「Yellow Magus」

 これまた楽しみなバンド。
この美しい演奏が生で見れるのか…



細野晴臣「The House of Blue Lights」



No Lie-Sense「イート・チョコレート・イート」
 
ここでおじさん枠が続く夕暮れタイム



電気グルーヴ「Missing Beatz」
 
YMOメンツを目の前にしてどういうギミックで来るのか。
というか楽屋にまりんとかケラさんとかいるのを考えると面白すぎる。



奇妙礼太郎トラベルスイング楽団「どばどばどかん」
 
2012年は「桜富士山」をヘビロテしたもんだ。
夜聞く奇妙礼太郎は最高だろうなあ



高橋幸宏 & METAFIVE「"TECHNO RECITAL" OFFICIAL BOOTLEG TRAILER」
 
ある意味このフェスにくる人達が最も求めている音像がこれだ。
YMOでもHASでもHASYMOでもないけど限りなくYMOっぽい!



いやー楽しみだわ。
それでは夢の島でお会いしましょう!

2014年7月3日木曜日

お父さんもなあ若い頃は高田馬場のジョイ・ディヴィジョンと言われてたんだよ

今さらながら高田馬場のジョイ・ディヴィジョンことトリプルファイヤーにハマった。

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エモーションを排したラップ、いやポエトリーリーディング…?というより独り言に近いボーカルと反復するタイトなビートが最高にクールなんだけど同時にとてつもなくしょうもない。この無駄を削り落したビートに無駄なことしか言ってないボーカルというバランスがたまんないのだ。


世間に対する皮肉や人生の真実やメッセージを言っているようで…そうでもないような…何だかふんにゃりした歌詞についてこちらのレビューで「うすた京介の世界観」と表現されていて思わず膝を打った。言われてみれば「面白いパーティー」「ちゃんとしないと死ぬ」「本物のキーホルダー」といった曲名もうすたテイストに溢れていてまるでハマーさんの曲みたいだ。彼らの何とも言えないビジュアルも「ピューと吹く!ジャガー」に出てくるバンドマンっぽく見えてくる。




この独特の音楽についてele-kingのレビューでは

ノー・ウェーヴ/『Solid Gold』あたりの頃のギャング・オブ・フォー/後期のゆらゆら帝国を混ぜ合わせたような、タイトなパンク・ファンク・サウンド

と表現されている。しかしYouTubeに「James Chanceっぽい」というコメントがあり気になったので聴いてみたらこれこそまさに、というかまんまだった。





本人たちはDAFやYOLZ IN THE SKYが好きと公言しているらしいのでメッセージ性とビート感覚を大事にしているみたいだがその2つからシリアスを抜き取るとこんな感じになるのか!という印象だ。

アルバム全編が作詞:吉田靖直(ボーカル)/作曲:鳥居真道(ギター)で構成されているが唯一吉田氏が作曲も手掛けた8曲目「神様が見ている」がこれまたずば抜けて変な曲なので彼の才能がすば抜けておかしいということがよくわかる。何と言うか、電気グルーヴ『UFO』に収録の「ちょうちょ」(作詞・作曲:ピエール瀧)を聞いた時の「あ、この歌ってる奴が一番やばい」感を思い出した。



しかしこのインストアライブの「カモン」の映像はやばい。




初めて聴いた人はアドリブで適当言ってるみたいに見えるかも知れないけど「カモン!」「みんな~」「両手上げろー」「体揺らせ~」「最高ー」は全て歌詞にあるし音源も概ねこんな感じだ。会場では笑いが起きているけどこれがただの道化なのか、それともショービズなロックスターに対するメタ批評なのか、目が笑っているのか笑っていないのか、はっきり言ってよくわからない。まさに岡村詩野氏言うところの「東京に久々に現れた愛すべきミュータントたち」だ。

2014年6月19日木曜日

ZAZEN BOYSの「はあとぶれいく」ってNew Order「Perfect Kiss」に似てない?

久しぶりにZAZEN BOYSの「はあとぶれいく」を聴いていてふとNew Orderの「Perfect Kiss」に似ているな…と感じた。





しかし検索しても誰もそんなこと言っていない。まあ四つ打ちでメインリフの音が似てるだけなんだけど…。だがインターネットは共感のメディアだ。俺の感じたことが例えトンチンカンでも書き残しておけばいずれ誰か共感する人が現れると信じている。


ところで今回「はあとぶれいく」について調べていて向井秀徳のインタビューで興味深い発言を見つけた。

向井秀徳:非常にシンプルな音作りになったですね。毎度リフを主体にしているんですけれども、さらにリフをメインにしたバンドサウンドになっています。一発リフができて、自分的にかっこいいと。何よりこのリフを弾いたら気持ちいい。じゃあ何回も繰り返そう。それで形になったかもしれません。 
「はあとぶれいく」という曲は、完全にひとつのリフが回転していくだけの曲で、一回も展開しない訳ですよ。そこにメロディを乗せて、どれだけ感情豊かな曲にできるのか。そういう意図があるかもしれませんね。
http://www.billboard-japan.com/special/detail/223

ZAZENの歌モノと言えば初期の名曲「KIMOCHI」だがあれもリフ一つが延々繰り返されるだけなのにとても感情豊かな曲だ。「KIMOCHI」はちょうどナンバーガールとZAZENのブリッジのような曲だと思っている。向井氏が実は本来持っている甘酸っぱいメロディセンスと怒涛のようなインプロヴィゼーションが一つのリフという制約の中で同居している。

このブリッジを渡り切った先のアルバム「Ⅱ」で彼らは完全なるZAZEN BOYSサウンドを確立していくことになる。しかし現メンバーのバンドアンサンブルが完璧に極まった状態で「KIMOCHI」と同じアプローチをしたら却って初期ナンバーガールのような原点回帰的な音像になったのはとても面白い。

伝達できん自分にハラが立つ
生まれ育ったその環境、歴史、思想すべて
ブチ込んで表すことができればいい
意味が分からん言葉で意思の疎通を計りたい 
犬猫畜生と分かち合いたいのだ
貴様に伝えたい 俺のこのキモチを
「KIMOCHI」ZAZEN BOYS


俺の「はあとぶれいくはPerfect Kissに似てる」というKIMOCHIも貴様に伝えたい。






ちなみに今回調べていて同じ「Perfect Kiss」というタイトルで全然違う別の曲があることを知った。
それはアニメ「お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!」の登場人物、土浦彩葉(CV:井上麻里奈)のキャラソンだ。



しかしひと通り聞いてみてこれはNew Orderへのオマージュとリスペクトにあふれる曲だということがわかる。

以下にその理由を挙げる。


「誘ってあげたい手に手を取れば 異国も怖くない 異星にだって行けちゃう」の部分が「I know you know. We believe in a land of love」(君も僕もみんな愛の国があると信じている)と呼応している。


●ストーカー気質の幼馴染みである土浦彩葉が主人公と「事故のふりしたPerfect Kiss」をキメたいというちょっと危険な内容の歌詞だが「Now I know the perfect kiss is the kiss of death」(今ならわかる。パーフェクトなキスとは死のキスだ)という歌詞をベースにしていることがわかる。


●間奏のベースラインがフッキーの高音域を多用する独特の演奏法の引用だ。


「感じてた淋しさを告げるのは言葉の無駄遣い それより1秒でも長く未来を語ろう きっとほんとの約束はひとつだけ」という歌詞は明らかにイアン・カーティスを失ったJoy Divisionが「メンバーが一人でも欠けたらJoy Divisionの名前でバンド活動は行わない」という約束を守りNew Orderを結成した経緯を描写している。


事程左様に「Perfect Kiss」土浦彩葉(CV:井上麻里奈)はNew Order「Perfect Kiss」に対するアンサーソングであるというのは明らかだ。



うむ。
このKIMOCHIは貴様に伝わらなくてもいい。

2014年6月13日金曜日

椎名林檎の『NIPPON』はポール・バーホーベンと高田渡と鳥肌実のスピリッツを受け継いだメタ的ナショナリズムパロディソングだ




サッカーは苦手な方なので椎名林檎がサッカーW杯応援ソングを作ったと聞いた時は
えー…と思ったし実際に曲を聴いたら想像よりもバンザイ日本!ガンバレ日本!!という
威勢が強すぎていつものクールな林檎ちゃんはどこに行っちゃったの…落胆してしまった。

しかしある記事を読んでその見方ががらりと変わった。
椎名林檎のNHKサッカーテーマ曲「NIPPON」は「右翼的」?
「別に普通」「神風特攻隊を連想させる」ネットで議論に
http://www.j-cast.com/2014/06/12207494.html

これひょっとして意図的に作ってるんじゃないの、と。

W杯に熱狂的になり過ぎるあまりナショナリズムや右翼にまで傾いてしまう一般市民を
メタ的な視点で描写してるんじゃないの、と気付いた。


思い返してみれば椎名林檎のメタ視点はデビュー当時から一貫している。
福岡でくすぶっていたパンク少女が自身を売り込むために「新宿系自作自演屋」を名乗り出したのは
スキル・容姿を客観的に見て肩書きを付けることでインパクトを与えるセルフプロデュースの賜物だ。

東京事変では作曲をメンバーに任せてバンドボーカルとしての椎名林檎を演じ、
すっかり定着したところで満を持して作曲に返り咲き『能動的三分間』という傑作を生み出した。
これも「椎名林檎はバンドでどう振る舞うと面白いか」という視点からの演出だ。

不倫報道があれば「三文ゴシップ」という直球タイトルのアルバム(アートワークは雑誌FLASHや
FRIDAYを意識したのかのようなヌード写真!)をリリースし、整形疑惑が流れれば自身のコンサートで
それをほのめかし認めるような館内放送をアナウンサーのように読み上げる。


つまりキャリアにおいて常に「自分が世間からどう見られているか」を意識し、
それらをメタ的に解釈して還元するというセルフプロデュース能力に長けているのだ。

今回はそのメタ視点を用いて「典型的なサッカーナショナリストの行動心理」を
皮肉たっぷりに歌ったのだと僕は考える。

結果、リベラル・左翼側は当然激怒して批判しナショナリストは同族嫌悪で批判するような事態になった。
特に当事者であるサッカーナショナリストはまるで鏡に映る自分を見せられているような気分になったに違いない。
そう踏まえてこの記事を読むととても興味深い。

椎名林檎のNHKサッカーテーマ曲、その“右翼ごっこ”より問題なこと|女子SPA!
http://joshi-spa.jp/102361

これを読んで思い出したのは映画監督ポール・バーホーベンが『スターシップ・トゥルーパーズ』を
公開した時のエピソードだ。

上映を見た一部の観客や批評家が
「これは戦意高揚のための右翼的映画だ!」
「まるでナチスのプロパガンダ映画だ!」
と本気で怒り出したのだ。

これを聞いたバーホーベン監督は各種メディアを通じて
「これはエソテリック(分かる人にだけ分かるような)ムービーだ」
「これは「ナチスのプロパガンダ映画」をパロディにした反戦映画だ。分かるか?」
と一々説明して回らなければならなくなってしまったのだ。

自身の幼少期の陰惨な戦争経験から強烈な皮肉を込めた作品を作った結果、
受け手側のリテラシーが低く反戦映画が"右翼ごっこ"と認識されてしまったのである。
(まあこれはある程度監督自身も想定していた事態かもしれないが)


もしかすると先ほどの記事の音楽批評家や一部の激怒している人たちに
高田渡の『自衛隊に入ろう』を聞かせたら
「自衛隊を礼賛するとは何事だ」
「”自衛隊に入って花と散る”が神風特攻隊を連想させる」
と本気で怒り出してしまうかもしれない。
実際にこの曲には当時の防衛庁が自衛隊のPRソングとして使いたいとオファーした
という爆笑エピソードもある。


また思想啓蒙活動をメタ的に捉えてパロディにして笑わせる手法は鳥肌実を彷彿とさせる。

鳥肌実はあんな芸風の割にノンポリを貫いていたがここ最近は保守系団体のイベントに出演したり
デモに参加したりして"演説芸ではない"演説を行っている。これは朱に交われば、ということではなく
「危機に直面している日本の現状に目を向けてほしい」という風にここ数年で思想が変化したから、らしい。

右翼ギャグ芸人だった彼や、先ほどの記事に書かれている通り
「過去に軍歌に特化したイベントを開催したり、愛車にヒトラーと名付けたり」という風に
ファッション右翼だった彼女でさえこの様なアクションを起こすような、起こさせるような空気が
今日本に蔓延しているのかも知れない。前回のエントリでも言及した坂本慎太郎言うところの
「さすがに、メッセージ的なものが何もない音楽って、今どうなんだろうって、ちょっと思いますね。」だ。


ちなみにメタ的な視点という風に考えると先の記事に
「日本と関係ない試合でこれが流れるマヌケさ」という意見があったが、
スポーツニュースで他国同士の試合が流れたところで大多数は「日本とのゲーム差は○○」
「ここでこの国が負ければ勝点××なので日本がベスト8進出」と自国のことしか考えない傾向が
あるので結果的にこの曲が意図している状況が見事に実現されていることになる。

他にも彼の言う「不必要なまでに過剰」「明らかにTPOをわきまえていない」
「そもそも日本以前にサッカーという競技そのものを想起させる瞬間すらない」
もすべてそういう意図で作られているから、と言う他にない。
あまりこの言葉は使いたくないがいわゆる”釣られた”というやつだ。


そして僕がこの曲を聴いて最初に感じた違和感
「バンザイ日本!ガンバレ日本!!という威勢が強すぎる」というのはある意味
正しい受け止め方だったということがわかる。
これまたそういう意図で作られているからだ。

同時に僕がW杯が開催される度に辟易してしまうのはサッカーが苦手だからではなくて
代表選手に対して「国家の威信」「日の丸を背負って戦え」「国歌をちゃんと歌え」「負けは国辱」と圧力をかけ、
同調しない人には「非国民」「応援しない人は日本人じゃない」と圧力をかけてくるような、
この曲で描写されているようなサッカーファンが苦手だからということに気付かされた。


と、自分の意見をここまで述べてきたが彼女がどこまで意図していたかは正直わからない。
熱狂的なファンをモチーフにして歌った結果、熱気よりも冷や水を浴びせるような曲に
たまたまなってしまっただけなのかもしれない。

しかしここまで皮肉の利いた曲だと考えるとジャケット写真すらも意味深に見えてくる。
いくらサッカーに詳しくない僕だってサッカーボールは蹴るものだということぐらいは知っている。


ほんのつい先考えていたことがもう古くて
少しも抑えて居らんないの
身体まかせ 時を追い越せ
何よりも速く確かに今を蹴って

2014年6月8日日曜日

坂本慎太郎のセカンドアルバム『ナマで踊ろう』があまりにも素晴らしかったので久しぶりに長文を書いた























一時代を築いたような圧倒的なキャリアを誇るバンドが解散した後に
ソロや別バンドを組んでリリースするアルバムにとても興味がある。
特にそういう場合のセカンドアルバムが個人的に大好きなのだ。

ファーストアルバムは自身のそれまでの作品と地続きのような形になるものが多いのだが、
そこで自分自身と真摯に向き合ったアーティストはセカンドアルバムで劇的な変身を遂げることがある。

コーネリアスの1st『THE FIRST QUESTION AWARD』はギターポップと皮肉めいた歌詞で
フリッパーズ・ギターの延長線上のような作品であったが、
続く2nd『69/96』はへヴィーメタルと69年趣味をサンプリングでグチャグチャに混ぜた
それまでに誰も聞いたことがないオルタナティブロックアルバムとなった。

曽我部恵一の1st『曽我部恵一』はバンド時代の肩の荷が下りたかのような
内省的で素朴なアルバムだったが、
2nd『瞬間と永遠』は今までの美しいメロディはそのままに
その後の曽我部恵一BANDの音像を示すようなざらついたガレージフォークアルバムだった。

ZAZEN BOYSの1st『ZAZEN BOYSⅠ』はNUMBER GIRLのラスト・アルバム
『NUM-HEAVYMETALLIC』の続編のような作品だったが、
2nd『ZAZEN BOYSⅡ』はツェッペリンとプリンスがぶつかり合う強力なビートに
念仏・説法のようなラップが融合するとんでもない傑作であった。


坂本慎太郎の1st『幽霊との付き合い方』は言うなれば『ゆらゆら帝国のめまい』『空洞です』で見られた
美しいポップスを作る職人としての彼の才能が如何なく発揮された名盤だったが、
この2nd『ナマで踊ろう』はそれまでとはまるで別の、いや、たゆたう音像はそのままに
今までの彼のキャリアにはなかった極めてメッセージ性の高いアルバムとなった。

ジャケットは本人の肖像写真をモチーフにしているがその顔は髑髏になっている。
後ろには巨大なキノコ雲。中のアートを見ると砂漠に飲み込まれた都市、
何もない海辺にポツンと立つヤシの木と妙に退廃的で虚無的なイメージが広がる。

しかしその景色にどこからともなくハワイアンのような呑気なスティールギターが聞こえてくるのだ。


彼は本作のコンセプトについて「人類滅亡後の世界」であると明言している。

昔の常磐ハワイアンセンターとか、ハトヤ温泉とか、ファミリーランドみたいな遊園地で も
いいんですけど、そういう人工的な楽園みたいなものを作ろうと思った人達…その人達は
もう死んじゃってるんだけど、その人たちの意志や志みたいなものだけが、まだふわふわと
このへんに漂っているような、そんなイメージなんです。人類が滅亡してもその気持ちや
魂だけが残って、誰もいない宇宙に漂っているっていうのが、すごいかっこいいと思ったんですね。
もっと具体的にいうと、人類が滅亡した地上で、ハトヤのCMがただ流れている、みたいな。
http://realsound.jp/2014/05/post-586_2.html

それは共感だとか連帯だとか絆のような、ともすれば宗教的になってしまう概念を嫌い
「後ろで何となく流れているが、よく聞くと恐ろしい音楽」を目指した結果である。
そしてそのコンセプトは見事に実現出来ていると思う。


アルバムを再生すると最初に流れる1曲目「未来の子守歌」では

かつてこの国には
恐ろしい仕組みがあった
君のパパやママが
戦ってそれを壊した

でも思い出して
そいつはいるよ
明日起きて
考えてみて

と寓話的に滅亡後の世界から我々に語りかける。

ここから「世界に何があったのか」「どうして人類は滅亡したのか」という疑問を聞き手に抱かせて
1曲1曲聴き進めるごとにその恐ろしいシナリオがわかってくるような作りになっている。

2曲目「スーパーカルト誕生」でそれは明示的に表される。

愛より素敵なものだと
神より役立つものだと
どう見ても地獄だけれど
もう戻れない もとには

3曲目「めちゃくちゃ悪い男」では困難な時に優しい顔で近付いてくる男は
大抵めちゃくちゃ悪い男だよ、と語りかける。

「義務のように」「あなたもロボットになれる」は全体主義化される現代に対する痛烈な皮肉だ。

特に「あなたもロボットになれる」では頭にチップを埋めるだけで不安や虚無から開放される
ロボットになれるという内容だが、最後に出てくる歌詞の、

日本の5割が賛成している
危険のランプが点滅している

の部分で、それまでぼんやりと聞いていた者に
「これは現実の日本に住む我々が直面している話だった」という衝撃が走る。

そしてラストナンバー「この世はもっと素敵なはず」では

見た目は赤ん坊 すぐに泣いてしまう
いつが危険な この国の独裁者

そいつの機嫌で 何人も死んだ

見た目は日本人 同じ日本語
だけどもなぜか 言葉が通じない

中身はがらんどう 木彫の人形
そいつを拝んで ただ口をつぐむ

と今までにないほどの直接的な言葉で現代日本を痛烈に批判する。

そして

よく見なよ お前正気か?
(あいつらみんな人形だよ 自分の目で確かめておいでよ)

よく見なよ お前平気か?
(この世はもっと素敵なはず 自分の脚で確かめてきなよ)

と我々に強く語りかけるのだ。




アルバム全編で流れるスティールギターについて安田謙一氏は
「陶酔というより酩酊に近い、日常と隣りあわせのトリップ感」(http://zelonerecords.com/ja/news/1769
と評していたが、個人的には呑気というか陽気というかちょっとバカらしい雰囲気さえ感じてしまう。
しかしこの能天気さが人類滅亡を暗示する歌で鳴っているのが怖いのだ。

ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』ではゾンビ達が世界にあふれる終末的な映像に
ショッピングモールのラウンジ音楽のような常にのんびりとしたBGMが流れて恐怖を倍増させていた。

つまり、きっと人類滅亡はある日突然訪れる劇的なことなんかじゃなくて
知らない間に侵攻していて気付いた時には衰退しているようなものなのだ。

そしてそれは我々が東日本大震災以降に経験し、そして今現在も経験している
恐怖と呑気の感覚と地続きなのだ。

この恐怖と呑気の混在は楳図かずお作品を読んでいる時の感覚に似ている。
楳図氏言うところの「恐怖を突き詰めれば笑いになるし笑いを突き詰めると恐怖になる」そのものだ。

くしくも坂本氏は以下のように述べている。

特に今回は昔のSF小説とか漫画みたいな感じにしたかったんです。
若い頃読んだフィリップ・K・ディックみたいな。
漫画だと手塚治虫、楳図かずおとか。
そういう昔のSF(のスタイル)を借りて表現するっていうのは今の時代に有効かなって思うんですよね。

(「ミュージック・マガジン」2014年6月号 P.55)

ここで彼が挙げた手塚治虫や楳図かずおが昔から為政者によって猥雑で危険な思想物だとして
批判の対象とされていることと、今回のアルバムが示す内容に符号があるというのは考え過ぎだろうか。


個人的に深く刺さったのは8曲目「やめられないなぜか」だ。

地震 水害 台風 大火災
見舞われるたんびにもうやめよう
と思った でもやめられない俺は
あれを

殺されそうになったって
殺されない限りまだだ
やれるさ もうやめられない俺は
あれを

この歌詞は「原発政策に対する批判」という批評を読んだが個人的にはもう少し違う感じ方をした。
これは表現することをやめない坂本慎太郎氏の意思表明だと解釈した。
アルバムの中でもこの曲だけ彼の歌い方が特にエモーショナルに感じるのは私だけだろうか。


このようにアルバム全体でメッセージ性が強くなった背景について彼はこう語っている。

もうぼやかしたり、なんかありそうな雰囲気のものはもうやりたくないという
気持ちがあったんですよ。そのものずばりの、CMソングとか、子どもの読む少年漫画とか、
そういうバシッとしたものにしたかった。
http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/sakamoto-shintarou/1000000974

あと、さすがに、メッセージ的なものが何もない音楽って、今どうなんだろうって、ちょっと思いますね。

歌詞で言うとか言わないとかじゃなくて。なんでしょうねえ…ただ楽しければいいとか、
おしゃれだからいいとか…そういうのを今作ろうとは思わないですね。
http://realsound.jp/2014/05/post-586_3.html


先日ラッパーのK DUB SHINEと宇多丸がまるで共同声明のような楽曲
『物騒な発想(まだ斬る)』を突如として発表した。


彼らのレギュラー番組「第3会議室」でのやり取りを見れば分かる通り
思想がまったくの正反対で絶えず喧嘩している二人だが以下のように述べている。

宇多丸「僕とK DUBはさ、元々の言っている政治的なさ、考えみたいなのが結構反対だ、
みたいなことを言われてたんだけど。このご時世になると、お互い『これは…』っていう。こうね。」
http://miyearnzzlabo.com/archives/17436

彼らのような世代のミュージシャンが何かメッセージを発信せずにはおれない状況が
今まさに起こっているという気がしてならない。

深く考えれば考えるほど「この世はもっと素敵なはず」のラストがリフレインする。

ぶちこわせ
(この世はもっと素敵なはず)
ぶちこわせ
(この世はもっと素敵なはず)


2014年4月17日木曜日

明日滝を見に行こう





こうもPCばっかりいじってると自然の中に行きたくなる。

よく「滝にはマイナスイオンがいっぱいで都会はプラスイオンばかり」という話があるけど
そりゃあ近くにいて気持いいかそうじゃないかの違いだけだよなあ。
そんなこと行ったら女の子の胸元からはマイナスイオンがドバドバ出てると思うよ。

こんなに滝は愛されてるのにJ-POPの歌詞にあまり出てこないのは何故なんだ。
「君の青い車で滝へ行こう」「僕とあの森林まで 滝を見に行こうよ」とかダメか。ダメなのか。

2014年4月15日火曜日

田園調布に家が建つ




ピンク色の絨毯。

ここかなりの高級住宅街だった。
全然車が通らないから絨毯がきれいに残ってたし
ビニールシート広げて花見しだすワンカップおじさんもいなかった。

2014年4月14日月曜日

2014年4月10日木曜日

欲しいものを捨てに行く




毎日続けている習慣というものがない。

本やゲームは平気で途中で投げるし寝る時間も決まってないしご飯ですら4回だったり2回だったり。
思い切って習慣づけアプリを導入してみた。
とりあえず朝6時に起きて何かしらの運動を…と考えてるけど
およそ思いつく中で最も三日坊主になりそうなタスクだと気付いた。



PSG 愛してます ELNINO@asia

イルなラップで粗雑に歌うラブソング最高じゃない。

ぼんやりしてたら終わった永遠




新しい職場は畑違いの職種なので一日中勉強しているがこれが中々おもしろい。

家庭が嫌で飛び出した男の子がヤクザ社会に入って擬似家族を形成したり、
学校が嫌で飛び出した女の子がイベサーで学校より厳しいルールに縛られたりするのを
どうしても冷笑的に見る癖があるんだけど、
あれだけ大嫌いだった勉強を今こうして楽しんでいる自分はもう人のこと笑えないなと思った。




くるり 春風


オーケストラバージョン。後半の歌メロとオケがハモるところが気持ちいい。
そしてあらきゆうこのドラムがとにかくカッコいい。

2014年4月9日水曜日

いつかまた忘れてしまうのではなかろうか



河川敷の桜を見に行くのにもビールとフランクフルトと唐揚げをスーパーで買ってから行ってしまうあたりに大人になってしまった自分を感じてしまう。
「だって屋台で買うよりハンパなく安いじゃん」と考えてしまうのだ。
社会人なりたての頃は好き勝手買うもんね!と1回のお祭りで5000円ぐらい使ったものだが今ではヌルい発泡酒と冷めた唐揚げを食べて満足だ。
挙句この後胃もたれを起こした三十路の春。




サニーデイサービス  素敵じゃないか(RSRFES1999inEZO)


何でもない日の楽しさをクソ熱い野外で聞けるなんて素敵じゃないか。